2005年06月17日

チャールズ・ダーウィン(1809-82)…イギリス/進化論提唱者

<学問の道も適者生存>

●中退:ダーウィンの場合

若い頃のダーウィンは、ボンボンのバカ息子を絵に描いたようであった 。

彼は上流の出だ。祖父は著名な進化思想家エラスムス・ダーウィン、母は陶器製造で有名なウェッジウッド家の出身だった。優秀な医者だったダーウィンの父は、自分と同じ医学の道を歩ませるため、当時の医学名門校・エジンバラ大学に息子を入学させた。

繊細なダーウィンは、麻酔のなかった当時の外科手術の残酷さに耐えられず、人の血を見るとめまいを起こした。やがて、解剖学に激しい嫌悪と恐怖を覚えるようになり、医学の他「2年目に地質学と動物学の講義を受けたが、この講義が与えた唯一の影響は、生きている限り断じて地質学の本は読むまい、もしくは、この科学の研究は一切すまいという決意を固めさせたことだった」らしい。

その後も生涯、彼は興味のないことに集中できなかった。まったく医者になる気がない息子を父も理解し、2年でダーウィンはエジンバラ大学を中退する。

後のダーウィンは「父は私に『おまえは学問が嫌いで遊んでばかりいるから、ダーウィン家の後を継ぐことはできまい』といった」「全部の先生からも父からも、しごく普通の子供で、むしろ知能は平均以下だと見られていたと思う」など、幼い頃の落ちこぼれぶりを父からの視点で記した。ずっと彼にまとわりついたのがこの「やたらうるさくエラそうなオヤジのプレッシャーにおびえるありがちなドラ息子」的様相である。

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●人生のポイント

その後、またしても父の介入による投げやりな進路選択が行われる。

今度は牧師になるべく、ダーウィンはケンブリッジ大学神学部に入学させられた。これは当時、良家の子弟は医者か軍人か牧師になるのが当然で、ダーウィンが軍人になることを嫌ったためという、情けない理由による。

大学での彼は、植物学の講義以外は勉強に手を抜き、射撃や狩猟、酒や乗馬や酒、トランプ遊びや女遊びにうつつを抜かした。ここまでは、ダーウィン家に退化が生じたかのようだ。

が、転機が訪れた。大学内で出会った植物学者ヘンスローの影響により、ダーウィンは動物学、そして生きている限り断じて手をつけないと決意した地質学にまで関心をもつようになる。在学中にヘンスローの勧めで短期間の地質学研究旅行に同行し、研究者としての基礎も学んだ。

大学卒業後のビーグル号による世界周航も、ヘンスローが艦長フィッツ・ロイにダーウィンを助手として推薦したものだ。後の著作『ビーグル号航海記』『サンゴ礁の構造と分布』は、このときの調査や観察をもとにしている。

生物進化という発想も、ビーグル号での航海中に生まれた。説得力のある理論化にダーウィンはそりゃかけすぎだろうと思われるほどに時間をかけて、23年後、主著『種の起原』を発表する。

こうしてみると、皮肉にも神学部への入学が、神を否定する進化論を生むきっかけになったことになる。一冊に23年を費やす彼には、遠回りもやむを得まい。

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●もし中退しなかったら

嫌な仕事をしなくったって、資産家の息子だから食うには困らない。「十分な教育を受け、日々の糧のために働く必要のない人々の存在は、いくら評価しても評価しすぎることのないほど重要である。高度に知的な仕事はすべて彼らによってなされている」と述べた彼のことだから、上流階級の特権を生かし『種の起原』に匹敵する「高度に知的な仕事」をやり遂げたりして。

ちなみに、晩年のダーウィンは、めまい、動機、頭痛、嘔吐などの症状に悩まされることが多く、少数の親しい友人を除いて交際を絶って引きこもり、自説に対する批判に自分で反論に立つこともなかった。てことは中退しようがしまいが、最終的に彼の生活って、そんなに変わらなかったのかも。

darwin.jpg
「私は、できるだけ一生懸命に、できるだけよくやったのだ。誰もこれ以上にはできない」
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■プロフィール

祖父は進化思想家エラスムス・ダーウィン、母は陶器製造で有名なウェッジウッド家の出身。幼い頃から昆虫採集や狩猟に興味を抱いた。著作『自然淘汰』執筆中にA・ウォレスから生存闘争と自然淘汰を記した論文が届き、あわてた学者仲間がダーウィンの未発表論文とウォレスの論文をともに発表、自然淘汰説が世に出た。その後、ダーウィンは名著『種の起源』を出版、ウォレスは日陰の人に。「生物は過剰に繁殖するため生存競争が起こり、環境に適した有利な変異は保存され、不利な変異を起こせば絶滅する」という説は「生物は全能の神が創造した古来不変のもの」とするキリスト教の思想に対立するため、未だに進化論を受け入れないキリシタンは多い。

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■参考文献

パトリックトール/平山健監修 南条郁子・藤岡希美訳『ダーウィン』「知の再発見」双書9(創元社、2001)
ノラ・バーロウ編/八杉龍一・江上生子訳『ダーウィン自伝』ちくま学芸文庫(筑摩書房、2000)


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