2005年06月21日

アルフレッド・ノーベル(1833-96)…スウェーデン/発明家

<遺伝子でなく賞遺す>

●生涯独身・ノーベルの場合

ダイナマイト爆弾を発明したノーベルは、死んだ後まで爆弾発言女にゆすられた。

43歳のとき、彼はオーストラリアの花屋で働く売り子ゾフィー・フェス(当時20歳)と出会い、恋に落ちた。典型的庶民であるゾフィーと世界的な財産家のノーベル、年齢のみならず知性と教養の落差は大きかった。美しいゾフィーに貴族的な洗練を与えようと、彼は必死に尽くす。

が、無責任で気まぐれなゾフィーは、ノーベルの与えた小遣いで贅沢な暮らしを覚え、ますます気ままな女となる。さらにはノーベルの不在中、若い将校と恋をして妊娠。ここでやっとノーベルは、彼女を諦める。

ゾフィーは将校と結婚した後も、ノーベル名義で莫大な借金をし、夫婦別々にノーベルをゆすり続けた。

悪女は死者に対しても悪女である。ノーベルが死ぬと、彼の遺言で遺産を得られなくなった親族が不満を示すドサクサのなか、誰もその存在を知らなかったゾフィーが名乗り出て、高額を要求した。さらに、ノーベルからの手紙216通や写真などを、遺言執行者に法外な値段で売りつけた。脅迫とスキャンダルを恐れた執行者は、渋々それを買わざるを得なかった。

ノーベルは財産を近親者に相続させることを「怠けぐせを誘発し、人類の堕落に貢献する」と、反対していた。花売り娘を贅沢暮らしでアバズレ女に変貌させてしまった男の言葉は説得力に満ちている。彼が生涯独身を貫いた最大の理由は、ゾフィーとの恋に懲りたためだろう。

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● 人生のポイント

生前のノーベルは「破壊王」「悪人」「死の商人」といった悪評を浴びていた。彼も自分自身を「この世に生を受けた瞬間に、慈悲深い医師の手で絞殺されたほうがマシだった」、自分の発明品を「低劣な殺人道具に堕したるもの」と評した。

ノーベルは戦争を「惨事の最たるもの、あらゆる犯罪の筆頭」と考え、「ひとつ強力な爆薬か兵器を発明し、それがものすごい破壊力を持つとわかれば、戦争などは以降一切起こらなくなるだろう」と思っていたのだ。が、彼の発明品が兵器として使われた以上、ダイナマイトの発明や約355種 の特許は、本人にとって名誉でもなんでもなかった。

そんなこんなで名誉称号や表彰に類することを一生軽蔑したノーベルだが、彼が偉人たる最大の理由は、彼の遺産と遺言から設立されたノーベル賞、にあるだろう。世界平和と科学の進歩を願う彼の強い気持ちがこの賞を生んだことはもちろんだが、生涯を独身で通した彼には莫大な遺産を相続させたい人物がいなかった、というのも賞が無事成立したポイントである。

仮に今、彼が生きていたらどう思ったろう。原爆や水爆の存在に嘆きつつも自分よりひどい奴がいることや、彼の名が栄誉とともに世界中に響き渡っていることに、ホッとするだろうか。それよりは、自分の考え出した賞が世界平和にあんまり貢献していないことや、昔自分がアバズレ女に書き送ったラブレターの内容を思い出し、死にたくなるんじゃないだろうか。

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●もし結婚していたら

妻は世界一セレブなミセスを目指し、ひたすら金遣いを荒くするばかりで、巨万の富を持つ夫を「もっと稼げ」と急き立てる。妻の愛人は彼女のはからいでノーベルの会社ノーベルインダストリーで重役の地位を与えられるが、仕事に没頭するノーベルは彼が恋敵であることにすら気づかない。やがて妻は愛人の子を産み、稼ぐだけ稼いだ夫に前代未聞の保険金をかけた後、爆発事故に見せかけ殺害。ノーベルの死後、愛人と元妻は盛大な結婚式を挙げるが、権威あるノーベルの名はそのまま利用。悪名名高い爆弾一家として知られるこのノーベルファミリー、世界のどこかで戦火が生じるたび、莫大な富をもたらす戦争開始の原因を作った人物にこっそり献金進呈。
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「尊敬されるには、尊敬に値するだけでは不充分」
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■プロフィール

爆薬の改良に専念し、ダイナマイト、無煙火薬などで約355種の特許を取得した。世界各地に爆薬工場を経営し、これらを基盤にノーベル・ダイナマイト・トラスト会社を創設するが、重役会、株主総会、財界の会議などは大嫌いで、指令は文書で出した。人類に対して最大の貢献をした人物に毎年、賞を授けるよう遺言したため、ノーベル財団により、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和部門についてノーベル賞が授与されるようになった(1969年にスウェーデン銀行により経済学賞が制定される)。バクー油田開発でも富を築いているが、遺言が公にされた当時は、取り分の少なさに憤った親族が、遺言の無効認定を求める訴訟を起こしたりしていた。

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■参考文献

ゲルハルト・プラウゼ/丸山匠、加藤慶二訳『天才の通信簿』講談社文庫(講談社、1984)
エリック・ベルイェングレン/松谷健二訳『ノーベル伝』(白水社、1968)


posted by 73 at 00:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 生涯独身 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
興味深く拝読しました。ノーベルが生涯独身だったことは知っていましたが、当記事に書かれたような女性関係は知りませんでした。
(ちなみに、ゾフィーはオーストラリア人ではなく、オーストリア人のようです)
Posted by 匿名希望 at 2012年02月18日 07:09
ノーベルが結婚していたら、発明王にはなれなかったろう。なぜなら、女性はちらかしたりするとうるさいし、妻との付き合いで疲れ果てるし、神経を集中する発明の仕事はできないものだと容易に想像できます。
Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2014年10月02日 19:22
ノーベルの遺産はノーベル賞として生きている。
この貢献は何物にもかえがたい。
Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2015年03月02日 05:08
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