2005年07月08日

カール・マルクス(1818-83)…ドイツ/共産主義思想家、運動家

<実は浪費家>

●借金:マルクスの場合

ブルジョア階級の家庭に生まれ、弁護士の父を持つマルクスは、成人してからの人生のほとんどを借金に追われながら生きた。

食うや食わずの状態に陥っては、「妻は毎日、子供たちと一緒に死んでしまいたいといっている」などとフリードリヒ・エンゲルスに窮状を訴える手紙を書き送り、援助を求めた。裕福な親戚や知人にも金を無心し、誰か死ねば遺産を期待した。

といっても、彼に金がなかったのではない。実際のところ、最も困窮した年でさえ、マルクスはエンゲルスをはじめとする各方面から、切り詰めればそこそこ生活できるくらいの助成金を得ていたのである。借金の原因は、使いすぎだ。借金取りが列をなして家のドアを叩き、家族の食べ物も満足に買えない状況となっても、マルクスは秘書を雇い、妻の服を新調し、子供を学費の高い専門学校に通わせてフランス語、イタリア語、絵画、音楽の家庭教師をつけた。

もともとマルクスは若い頃から金遣いが荒く、大学在学中もほとんど講義に出席しないで、絶えず借金をしていた。1年に親の仕送りを700タラー近く浪費したが、これは普通の学生が使う金額の数倍であり、当時の市議会議員の年収に相当する。

生きるということの究極の法則を問われたマルクスは「闘争!」と答えている。ということは、借金取りとの闘争も、彼が望むところだったのだろうか。真の意味のマルクス思想とやらは、「節約」とは相容れないものなのかもしれない。

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●人生のポイント

マルクスがブルジョア階級に生まれながらブルジョアを憎み、持たざる者の声を代弁できたのは、自らを持たざるものの状態に追いやる比類なき才能を持ち合わせていたためかもしれない。「商品の価値は標準的な条件のもとでその生産に必要とされる労働量で決まる」と労働価値説を展開させた彼だが、商品を得る手段として労働しようとしたことはほとんどないのだ。

借金が途方もなく膨れ上がったときには、さすがのマルクスも鉄道会社の事務員として働こうとしたが、あまりに字が汚く誰にも読めないので不採用となる。彼がどうにか生き長らえ、数々の著書を完成させることができたのは、彼の妻以外に唯一その汚い字を読める人物、エンゲルスの助成によるところが大きい。彼は精神的にも経済的にも革命的にも、マルクスが生きている間のみならず死んだ後まで、バックアップし続けたのである。

不安定な生活を強いられたマルクスの子供たちは、4人が彼より先に死に、2人が自殺している。「これほど金不足な人間が'金'について書いたことはこれまで1度もなかったのではないか」と自らをジョークのネタにしながら、マルクスは30数年をかけて主著『資本論(資本――経済学批判)』を書き上げた。

が、今でこそ「リンネル」の意味もわからぬままやたらと読まれるこの本、当時はほとんど売れなかった。あまりに反響がなくて不眠症に陥ったマルクス、国籍も遺言もたいした財産もないまま亡くなった。

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●もし倹約家だったら

倹約主義者同盟を組織し、「今日までのあらゆる売り買いの歴史は価格闘争の歴史である」の序文で始まる『倹約党宣言』を記す。この書により、投資家、貯蓄家、宵越しの金は持たない江戸っ子などの浪費家による三項対立が明らかにされる。浪費好きの貴族たちを非難しているうちに不当逮捕が繰り返されるようになり、ケチの集まるオランダに亡命。「食事とは味わうものではなく、空腹を満たすもの」という考えを全世界に広め、「水道水をチョロチョロ少しずつ出しても水道代は変わらない」など、これまで信じられてきた倹約法に異論を提唱。価額による家計理論を樹立するために記された彼の主著『基本――高額批判』は、節約好き小市民のバイブルに。
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「哲学者たちがやったのは、いろんな方法でこの世界を解釈しただけだ。重要なのは変えることだ」
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■プロフィール

ドイツの共産主義思想家・運動家,いわゆるマルクス主義の祖。両親の家系はいずれも代々ラビ(ユダヤ教の教師)を出してきた由緒あるユダヤ人家族。近代資本主義経済体制が抱える矛盾により、没落せざるをえないことを究明し、近代を克服する革命的実践の戦略・戦術を立てた。彼の思想は「科学的社会主義」と呼ばれ、哲学的には「弁証法的唯物論」といわれる。「マルクス経済学」と呼ばれる経済学批判体系を築いたが、「マルクス思想」なるものは専門の研究者たちの間でもまだ統一されていない。が、その思想は日本の社会主義運動、思想界にも大きく関連し、「マルクス離れ」といわれる昨今も、左翼的な思想運動、実践運動に影響を与えている。

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■参考文献

フランシス・ウィーン/田口俊樹訳『カール・マルクスの生涯』(朝日新聞社、2002)
マルクス/ 都留重人著『人類の知的遺産50』(講談社、1983)


posted by 73 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 借金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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