2005年08月02日

トーマス・エジソン(1834-1901)…アメリカ/発明家

<無形の宝物>

●身体障害:エジソンの場合

発明王エジソンは、ひどい難聴だった。

自分の耳が聞こえなくなったのは、幼い頃に鉄道で一緒に働いた車掌のせいだ、と彼自身は語った。電車の販売員だったエジソンが、列車内に作った実験室で火事を起こしたとき、怒った車掌が耳のあたりを殴って鼓膜が破れたという説や、新聞を抱えて電車に飛び乗ろうとしたエジソンの体を、車掌が耳をつかんで持ち上げた時に「頭の中でプツンと何かが切れる音がした」話などは、彼の難聴の原因として知られているものだ。

真相は、幼年時代のしょう紅熱の後遺症で中耳が冒され、これらの事故でさらに悪化したようだ。13歳になってからは、小鳥のさえずる声を聞いたことがなかった。彼は聴覚の喪失を、学校に行かなかったことと共に「無形の宝物」と呼んだ。一見強がりにも聞こえる難聴についての彼の発言は、以下。

音に惑わされることなく考える事ができるし、いつでも静かな環境で眠ることができる。俗人と交わることもなく、退屈極まりない社会的な関りに背を向ける口実ができたし、いたって生産的な思考ができるようになった。仕事の上では口約束や耳約束ができないため必ず書面で契約することにしたため、不必要な問題からしばしば解放された。婚約者を口説くときには普通より相手のそばに近づくことができた。結婚してからは嫌なことを聞かなくても済んだ。聴力の異常を感じ始めた頃は読書に没頭した。今では雑音が耳に入らないことを幸運だと思っている。

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●人生のポイント

「もし私があなたのように偉大な発明家であったら、世界中の聾者がみんな聞こえるようになる機械を発明するのですが」対面した折、こう語ったヘレン・ケラーに対し、エジソンは答えた。「あなたはそんなことを考えておられるのですか? 私ならそんなことをしたってヒマつぶしにしかならないと思います。人間というものは、聞いても聞かなくてもいいようなことばかりしゃべっているものですからね」

実際、依頼がありながら、エジソンは補聴器を作ろうとは考えもしなかった。また、自分が生んだ蓄音機にも冷淡だった。「『必要は発明の母』というが、必要もないのに発明されてしまったものだ」といい、商品化するまでに10年近く放置した。

耳を頼れなかったエジソンは、金属板を歯で噛み、振動を顎の骨に響かせるという方法で音響テストを行った。ピアノを噛んで音を聞いていた証拠に、愛用していた彼のピアノには、側面に彼の歯型が残っている。第一発明者であるベルの電話を出し抜いて、エジソンの製品が世に認められたのは、この厄介な方法で改良を加えた電話のほうが、はるかに音声を聞き取りやすかっためだといわれる。

「麻薬中毒と同じで、雑音中毒になっている人があまりに多いのではないだろうか」と語ったエジソン。聞くべきものも聞き取れなくなりそうなほどに音が溢れる現在、彼の言葉はずいぶん説得力を増している。

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●もし身体障害がなかったら

補聴器、玄関チャイム、防犯ブザー、拡声器、着メロ機能つき電話、トイレの水洗擬音装置など、実用性のある音を利用した製品を次々発明。ウォークマンの製造に先立つこと100年、携帯用小型ステレオ再生装置を製品化し、音声を聞けるだけでなく、知らない人に話し掛けられにくくなる道具として大反響。録音機能つき小型スピーカーも完成させ、「潮時の恋人とうまく別れるいびき音」「恨みを持つ相手に恥をかかせる放屁音」「食事中聞けば食べすぎを防げる吐瀉音」などがいつでもどこでも録再可能に。晩年には防音・消音グッズを次々に発明、20世紀末に日本で始まったカラオケ市場拡大に伴い需要爆発。
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「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」
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■ プロフィール

二重電信機、白熱電球、映画、アルカリ蓄電池などをはじめとする業績(改良を含む)で知られる発明王。生涯の特許は1300件を超える。少年時代は学校に数ヵ月しか行かずに電気や化学の実験に熱中した。熱電子放出(=エジソン効果)を偶然に発見するが、実用性のない科学上の業績には価値を置かなかったため、その研究は他の科学者によって進められた。第一次世界大戦にアメリカが参戦してからは、一時事業をやめて海軍顧問会議の会長となり、軍事技術の課題に没頭した。エジソンの研究所は現代の企業研究所の先駆けとなったが、経営者としては失敗も多く、友人フォードは「エジソンは世界最大の科学者だ。エジソンは世界最悪の企業人だ」と語った。

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■ 参考文献

ニール・ボールドウィン/椿正晴訳『エジソン』(三田出版会、1997)
マシュウ・ジョセフソン/矢野徹、白石佑光、須山静夫訳『エジソンの生涯』(新潮社、1962)
浜田和幸『快人エジソン』(日本経済新聞社、1996)
R.W.クラーク/小林三二訳『エジソンの生涯』(東京図書、1980)
ネストール・ルハン/日経メディカル編『天才と病気』(日経BP社、2002)


posted by 73 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 身体障害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
発明王のエジソン・・・。

変った男だったらしいけど、変わってて当然か・・・。
Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2015年01月15日 12:16
難聴だった発明王エジソン・・。
雑音が耳に入らないので、仕事に集中できたか・・。

Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2015年01月21日 07:25
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Excerpt: 天才とは1パーセントの霊感と99パーセントの発汗なり Genius is one per cent inspiration and ninety-nine per cent perspiratio..
Weblog: 悩んだときには名言集を
Tracked: 2010-10-20 17:37
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