2005年08月05日

マルコムX(1925-65)…アメリカ/黒人解放運動指導者

<檻は塾より効果的?>

●逮捕・有罪:マルコムXの場合

幼い頃から環境に恵まれなかったマルコムは、20歳で刑務所行きとなった。

マルコムが3歳の時、自宅をKKK(クー・クラックス・クラン=「アメリカ出生主義」及び「白人およびプロテスタント優越主義」のテロリスト集団)による放火で燃やされた。5歳になると、国際黒人地位改善協会の熱心な活動家かつ牧師であった父が、おそらくは白人の手により暗殺。やがてマルコムの家族は生活保護を受けるようになり、母は精神を病んで精神病院に入院する。

マルコムは福祉担当者の措置により近所の黒人の家から通学することになったが、万引きを繰り返すなどして13歳で退学処分を受け、少年鑑別所から彼以外全員白人の中学校(!)へ通うことになる。ここでは成績優秀な校内の人気者となり、彼は弁護士となることを志望するが、教師から「黒人であるという現実を忘れてはいけない」と大工になることを勧められ、以来、白人を避けるようになる。

15歳になるとマルコムはボストンで靴磨きの仕事をしたが、16歳でニューヨークに移る。徐々にギャンブル、麻薬取り引き、売春、ゆすりなどに手を染め、ギャング団の一員となり、ついにはハスラーとしてひとり立ちする。17歳では徴兵を逃れるため、精神異常者のフリをして、狙い通りに兵役不適格となる。ここまでだと15、16、17とマルコムの人生暗かった。で済むが、20歳の時に強盗で逮捕、10年の実刑判決を受ける。

-------------------------------------------------------------------

●人生のポイント

壮絶! とはいえ、これではまだ「ありがちなラッパーの半生」の域を出ない。話はここからだ。

中卒のマルコムは、刑務所内で英語とラテン語の通信教育を受け、めきめきと語学力をつけてゆく。入所して2年後には親戚の助力を得、実験的な犯罪者更正刑務所に移り、辞書を書き写し、音読し、復習してボキャブラリーを増やした。さらに、毎晩3〜4時間しか眠らないで、あらゆる分野の本を読みまくった。受験生でもここまでしないだろう。白人がいかに世界中の有色人種を搾取してきたかを彼が初めて知ったのも、刑務所内の本からだった。

やがてマルコムは、家族からの手紙がきっかけで白人を悪魔とみなすNOI(=ネイション・オブ・イスラム。アフリカ系アメリカ人によるイスラム教の最大派閥)の教義に傾倒し、この宗教団体の指導者ムハマドに毎日のように手紙を出すようになる。27歳で仮釈放となって出所し、すぐNOIに所属。間もなく初めての説教をすると、刑務所内で学んだ知識に基づくその雄弁さに、誰もが驚いた。日本の刑務所も更正施設を充実させれば、彼のような優秀な人材が続々登場する、かも。

次々活躍を続けたマルコムだが、ムハマドが個人秘書を女にだらしないこと、自分への暗殺計画が進められていたことなどに幻滅。NOIを去り、別の団体や組織を設立し、黒人解放運動指導者として、新しい展望によって黒人の完全な独立、自由・平等・正義などを実現しようとした矢先、39歳で暗殺された。

-------------------------------------------------------------------

●もし無罪になっていたら

賭博、売春、恐喝、ヘロインの密売と高利貸、強盗などを主な財源として一大帝国を築き上げ「黒いアル・カポネ」と呼ばれる暗黒界の若きドンになる。浮浪者、失業者、売春婦、麻薬中毒患者、全科者など社会の底辺で喘ぐ弱者を情報収集に利用する代わりに、援助の手を差し伸べる。やがて、誰かがマルコムを常に尾行するようになり、脅迫状や脅迫電話が日常茶飯事となる。65年1月、マルコムは自宅の前で襲撃を受け、翌月には家に火災瓶を投げ込まれる。同じ年の2月20日、3人の男がマルコムに駆け寄り、銃を乱射。すぐさま病院に担ぎ込まれたが、39歳の短い人生を終えた……って、途中から全然「もし」じゃなかったりして。
malcolm.jpg

「信念を持たない人間は、すべてのことに流される」
-------------------------------------------------------------------

■ プロフィール

アメリカ合衆国の黒人解放運動指導者。ブラック・ムスリムを脱会した後、宗教団体ムスリム・モスクと、政治組織(アフリカ系アメリカ人統一機構)を設立した。アメリカの不正や犯罪を国連に告発して、人権宣言、人権に関する国連憲章を利用することでそれに違反しているアメリカの実態を世界各国に知らせ、外圧利用により政府を変えようとした。が、メッカに巡礼し、新しい展望によるブラック・ナショナリズムを目指したときに暗殺された。入信以降は道徳的規範を忠実に守り、禁酒、禁煙のみならず、獄中期間を含めると12年間近くセックスを断ったという。若い黒人層に与えた影響は非常に大きく、映画が製作されるなど、今も高い人気を保っている。

-------------------------------------------------------------------

■ 参考文献
上坂昇『キング牧師とマルコムX』講談社現代新書(講談社、1994)


posted by 73 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 逮捕・有罪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。